
突然ですが、経営者の皆様に質問です。
もし、あなたの会社が長年培ってきた「当たり前のノウハウ」を使って、全くの異業種でミリオンセラー級のヒット商品を生み出せるとしたら、どうしますか?
「そんな夢物語…」と思うかもしれません。しかし今、それを現実のものにしている業界があります。出版業界です。
講談社や集英社といった出版大手が、なんと「ゲーム業界」でヒットを連発しています。彼らはゲーム開発の素人のはず。なぜそんなことが可能なのでしょうか?
この記事を読めば、その秘密である「編集力」という考え方を理解し、あなたの会社に眠る「見えない資産」を掘り起こして、新たな事業の柱を育てるための具体的なヒントが得られます。
1. いま何が起きているか? 出版社が「漫画編集のノウハウ」でゲーム業界を席巻
現在、ゲーム業界、特に個人や少人数で開発する「インディーゲーム」の市場で、出版大手が存在感を急速に高めています。彼らの武器は、ゲーム開発の専門知識ではなく、長年培ってきた「漫画編集のノウハウ」なのです。
具体的な事例を見てみましょう。
- 講談社の「クリエイターズラボ」
- 才能あるクリエイターに年間最大1,000万円を支援。
- まるで新人漫画家を発掘するように、企画書一枚で才能の原石を見つけ出す。
- 編集者がクリエイターに二人三脚で伴走し、開発をサポート。
- 結果:生まれたゲーム『違う冬のぼくら』は100万本超の大ヒットを記録。
- 集英社の「集英社ゲームズ」
- 元漫画編集者たちがクリエイターとタッグを組む。
- キャラクターの表情や感情の動きを、漫画のように深掘りして独自性を出す。
- 完成したゲームは即座に自社の雑誌で漫画化、Webで小説化するなど、高速でメディアミックスを展開。
彼らは、ゲームの作り方を知っていたわけではありません。しかし、「才能の原石を見つけ、磨き上げる方法」を知っていました。この異業種への参入と成功は、私たちすべてのビジネスパーソンにとって大きな学びとなります。
2. なぜ今「編集力」が最強の武器になるのか?
この動きが重要なのは、これが単なる「出版社の新規事業」の話ではなく、「才能と企業リソースの、新しい結びつけ方」の成功モデルだからです。
その背景には、2つの大きな時代の変化があります。
①「個の才能」が輝く時代への完全シフト
今は、高性能なPCや制作ツール、そしてSteamのような配信プラットフォームがあれば、個人でも世界を相手にヒット作を生み出せる時代です。これはゲーム業界に限りません。あらゆる業界で、組織に属さないフリーの才能が、大きな影響力を持つようになっています。
② 企業が持つ「コア資産」の再発見
出版社の強みは「面白いゲームの作り方」ではありませんでした。彼らが持っていたのは、
「クリエイターの原石を見つけ、対話し、才能を最大限に引き出し、世に送り出す」
という、普遍的な「編集力(=伴走力)」です。
つまり、自社の「当たり前」だと思っていたスキルを、全く新しいフィールドに応用したのです。
これは、巨額の予算で一つの大作を狙う「一本釣り」モデルではなく、多様な才能に投資し、その中からヒットの芽を育てる「ポートフォリオ型」の事業開発が、今の時代に極めて有効であることの証明と言えるでしょう。
3. あなたの会社に「編集者」を置く、具体的なアクションプラン
では、この学びをあなたのビジネスにどう活かせばよいのでしょうか。
私は、「社内に編集部を創設する」ことを提案します。
何も、本当に出版社のような部署を作るわけではありません。自社に眠る「編集能力」を見つけ出し、それを事業開発に活かす仕組みを作るのです。
【ステップ1】自社の「編集能力」を定義する
まず、あなたの会社が持つ、当たり前すぎて誰も言語化してこなかった「強み」を洗い出してみましょう。
- 精密機器メーカーなら…
- 「品質をとことん追求する厳しい目」
- 地域の工務店なら…
- 「顧客の曖昧な要望を具体的な形にする対話力」
- 営業が強い会社なら…
- 「泥臭く市場を開拓してきた突破力」
これら全てが、新しい才能と結びつく可能性を秘めた、貴社独自の「編集能力」です。
【ステップ2】「社内編集者」を任命する
次に、その「編集能力」を体現しているベテラン社員を「社内編集者」として任命します。彼らの役割は、新しいアイデアを評価することではなく、「アイデアの原石を持つ人と伴走し、磨き上げること」です。
彼らを、社内の若手や、場合によっては全く異なる分野の外部専門家とチームを組ませてみましょう。
「君のその尖ったアイデアを、ウチの品質管理ノウハウで磨き上げたら、世界が驚く製品になるんじゃないか?」
そんな対話が、イノベーションの第一歩になります。
まとめ:事業の本質は「編集」である
講談社や集英社の事例が教えてくれるのは、非常にシンプルかつ本質的なことです。
原石を見つけ、磨き、輝かせる。事業の本質は、いつの時代も「編集」だ。
あなたの会社には、まだ見ぬ才能を輝かせるための「編集能力」が必ず眠っています。
ぜひ、今日のミーティングでこう問いかけてみてください。
「我が社が世界に誇れる『編集力』って、一体何だろう?」
その答えの中に、あなたの会社の未来を変える、新しい事業の種が隠されているはずです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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あなたの会社の「編集力」は何だと思いますか?ぜひコメント欄で教えてください。
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