（この記事は、新しいビジネスの種を探す経営者・事業責任者に向けて書いています）
あなたの会社に、こんな「お荷物」はありませんか？
- 活用できていない遊休地
- 老朽化し、持て余している古い社屋や倉庫
- アクセスが悪い、郊外の拠点
もし、これらを「コストがかかるだけの厄介者」だと思っているなら、数億円規模のビジネスチャンスを見逃しているかもしれません。
先日、日経MJに衝撃的な記事が掲載されました。
鹿児島県霧島市。高齢化率50%超えの限界集落にあった「コンビニの跡地」を、人が殺到する人気スポットに変え、さらに自社（工務店）の本業の売上を5割も伸ばした経営者がいます。
これは単なる地方創生の美談ではありません。
自社リソースを「再定義」し、圧倒的な競争優位を築く「新規事業開発」の完璧なケーススタディです。
🏘️ 1. 何が起きたか？ 限界集落に「村」を創る
舞台は、おばま工務店が手がけた「小浜ヴィレッジ」。
彼らは約1万平方メートルの土地に、隈研吾事務所出身の建築家とタッグを組み、「村」を作りました。
そこにあるのは、画一的なチェーン店ではありません。
パン屋、クラフトビール工房、カフェ、雑貨店、そして7社が入居するオフィス棟やコワーキングスペース。
結果は驚くべきものです。
開業わずか1年で、約60人の新たな雇用と30人の移住者を生み出し、全国から視察者が殺到する「わざわざ行きたい場所」になったのです。
💡 2. なぜ成功した？ 「安売り」の逆を行く戦略
なぜ、この「村」は成功したのか。
ポイントは、開発の思想が従来のビジネスと「真逆」だったことです。
① 「資本」を地域で回す思想
彼らが目指したのは「ローカル・キャピタリズム」。
よくある「全国チェーン店を誘致して、家賃収入を得て終わり」というモデルを徹底的に排除しました。資本と意思決定の中心を、東京ではなく、この「地域」に置いたのです。
② あえて「強気な家賃」を設定
驚くべきことに、家賃はこの地域では異例の「強気な設定」にしました。
なぜか？
それは、「本気で挑戦したい」という志の高い事業者だけを選別するためです。
中途半端な店を排除し、腕利きのパン職人や、熱意あるスタートアップだけを集めました。
③ 「体験」に高額を払う人々
その結果、カフェのアメリカーノは1杯600円、パンは300円台。
一見、地方では無謀とも思える価格です。
しかし、人々は行列を作ります。
彼らはコーヒーやパンという「モノ」ではなく、洗練された空間、そこでしか味わえない「物語性」、そして良質な「コミュニティ」という「心地よい体験」にこそ、お金を払っているのです。
📈 3. 【最重要】経営者が学ぶべき「新規事業」の核心
さて、ここからが本題です。
このビジネスが本当に秀逸なのは、ヴィレッジ開業後、おばま工務店（本業）の売上が【5割】も伸びているという事実です。
なぜ、そんなことが起きたのか？
答えはシンプルです。
この「小浜ヴィレッジ」全体が、おばま工務店の技術力、デザインセンス、未来へのビジョンを体現する、「最強のショールーム」として機能したからです。
「こんなにクールな場所をゼロから作れる会社なら、うちの新しい社屋も任せたい」
「どうせ建てるなら、彼らのように『人が集まる』建物にしたい」
そう考えた他企業からの、大型の建築受注が激増したのです。
広告宣伝費をかけるより、よほど強力な「営業マン」ですよね。
🚀 4. あなたの会社で「今すぐできる」2つの新規事業のヒント
この事例を「鹿児島だからできた特殊な例」で終わらせてはいけません。
あなたの会社でも応用できる、具体的な「新規事業のヒント」が2つあります。
ヒント1：「お荷物」を「体験型ショールーム」に変える
あなたの会社が持つ「お荷物資産」を、本業の技術力をアピールする「見本市」として再開発できないでしょうか？
- もし、あなたが塗装会社なら…
- 自社の技術の粋を集めた「アートギャラリー 兼 カフェ」を、古い倉庫をリノベーションして作れませんか？ 壁面の特殊塗装そのものが、最高のプレゼン資料になります。
- もし、あなたがIT企業なら…
- 自社の最新DXシステムをフル導入した「未来のコワーキングスペース」を、本社の空きフロアで運営できませんか？ 入退室管理、決済、会議室予約…その「体験」こそが、見込み客への最強のデモンストレーションになります。
「体験」は、どんなパンフレットや営業トークよりも雄弁です。
自社の技術を「体験できる空間」として一般に開放すること。それ自体が強力な新規事業であり、かつ、最強の本業支援策となります。
ヒント2：「箱（不動産）」ではなく「場（コミュニティ）」を運営する
小浜ヴィレッジは「建てて終わり」ではありません。
彼らは「村長」を置き、専門の「コミュニティマネージャー」を常駐させました。
このマネージャーが、テナント同士の悩みを聞き、ハブとなり、
「庭のレモングラスで、ビールの新フレーバーを作りましょう」
「あの店のパンが余りそうだから、うちのカフェで仕入れよう」
といったコラボレーション（化学反応）を次々に生み出しています。
これはもはや不動産賃貸業ではありません。
「コミュニティ運営事業」です。
「箱」を作って貸すだけでは、価値はすぐに陳腐化します。
しかし、「人」と「人」を繋ぎ、化学反応を起こし続ける「仕組み（運営）」を提供できれば、その場所のブランド価値は上がり続け、人は集まり続けるのです。
まとめ：『お荷物』こそ、最高の『ショールーム』である。
この記事を読み終えたら、ぜひ自社の「遊休資産リスト」を眺め直してみてください。
その「お荷物」は、どうすれば、
あなたの会社の技術と哲学を体現する「儲かるショールーム」に変わりますか？
その「場所」で、どんな「コミュニティ」を運営しますか？
タワーマンション型の「効率」を追求する開発は、もう古い。
これからは、「物語」と「体験」をデザインした経営者が、本業でも圧勝する時代です。
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