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【議題269】凡打をヒットに変える「二毛作戦略」――サンスター文具に学ぶ、中小企業の資源活用術

昨晩、ある経営者仲間から電話がありました。 「小島さん、ヒット商品は出たけれど、次が続かない。このブームが去ったらと思うと、夜も眠れないんだ」

その震える声を聞きながら、私は数年前の自分を思い出していました。 私たちは常に「次の一手」を追い求め、必死にバットを振り続けています。でも、もし、一度振ったバットで二度、三度と得点できる仕組みがあるとしたらどうでしょうか。

この記事を読み終えたとき、あなたは「新商品を作らなければ」という強迫観念から解放され、今ある資産をどう「掛け合わせるか」というワクワクに変わっているはずです。


記事の要約

サンスター文具は2度稼ぐ:ユニーク商品を連打→当たればキャラ展開

サンスター文具が過去最高益を更新する勢いで成長している。その中核にあるのは、まず独自のアイデアで「ノンキャラ(技術・機能)」の商品をヒットさせ、その後に人気キャラクター(IP)を掛け合わせる「二毛作戦略」だ。爆発的ヒットとなった「ボンボンドロップシール」も、独自の立体技術を磨いた後に「ちいかわ」等のIPを展開。一過性のブームに依存せず、自社の企画力と外部のIPを戦略的に組み合わせることで、持続的な成長基盤を構築している。

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(出典:日経MJ 2026/4/15)

💡 3つのポイント

  • 「機能」で勝ち、「情緒」で刈り取る: まずは中身(機能・アイデア)で市場の反応を確かめ、後からキャラ(感情価値)を乗せる。
  • 「匿名アイデア会議」の威力: 役職を捨てた「熱意」を商品化の責任者に据え、年間800案もの熱狂を生み出す仕組み。
  • 「汎用性」という名の設計図: 開発段階から「他と組むこと(IP展開)」を前提に、余白を残した設計を行う。

ニュースの裏側にある「顧客の痛み」

今回のニュース、単なる「文具メーカーの成功体験」として読み飛ばしてはいけません。 私が注目したのは、サンスター文具がかつて「アナ雪」ブームの際に、既存事業を疎かにして手痛い失敗をしたという一節です。

経営者が一番怖いのは「売れないこと」ではありません。「自分たちの実力以上に売れてしまい、足元が崩れること」です。

多くの経営者は、流行り物やキャラクターの力に頼り、自社の「本来の強み」を磨くことを忘れてしまいます。しかし、サンスター文具の吉松社長はこう断言しています。「シール(ブーム)抜きでも成長する」と。

「借り物の力(IP)」で勝負する前に、「自分の足(企画・技術)」で立っているか。

苦情対応の現場にいた私だからわかります。お客様が本当に求めているのは「キャラ」という外装ではなく、その裏側にある「ワクワクする体験」や「不便の解消」です。サンスター文具は、その「不便の解消(ウカンムリクリップ等)」を先に証明してから、キャラという「ご褒美」を乗せている。この順番こそが、中小企業が生き残るための鉄則です。


実践:明日から現場ですぐにできること

大掛かりなライセンス契約なんて、明日すぐにはできません。でも、サンスター文具がやっている「思想」は明日から盗めます。

① 「匿名アイデアポスト」の設置

会議で社長の顔色を伺わせてはいけません。「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」にフォーカスする仕組みを作ってください。

メモ用紙にアイデアを書き、箱に入れる。

社長が一番「面白い!」と思ったものを選び、その発案者をプロジェクトリーダーに指名する。

② 自社商品の「余白」探し

今ある看板商品に、別の何かを「乗せる」スペースはありますか?

  • パッケージの裏側は真っ白ではないですか?
  • 商品の色を、特定の層(例えば地元スポーツチームのカラー)に変えるだけで「掛け算」は始まります。

③ 「社内二毛作」の検討

小島流フレームワーク:資産の再利用
種まき: 全く新しい用途で既存商品を売ってみる(例:事務用品をキッチン用品として提案)。
収穫1: その「新用途」での売上を確保。
収穫2: その用途に特化した「専用デザイン」や「コラボ」でさらに伸ばす。


おまけ:味変アイデア

「魔法の落書きダイニングシート」 食卓の透明マットを5層構造にします。子供たちが食事の合間に思いっきり落書きをしても、汚れたら一枚ペリッと剥がすだけ。すると下からまた「真っさらなキャンバス」が現れる。 面白いのはここからです。剥がしたシートは静電気で窓に貼れる仕様にする。 夕飯の時の落書きが、翌朝には窓を彩る「ステンドグラス」に変わるんです。 「片付けなさい!」という叱り声が消え、「明日は何を描く?」という会話に変わる。機能(汚れ防止)を、家族の記憶(アート)に変える。私なら、家具メーカーにこの「記憶の多層化」を提案します。


社長参謀からのエール

社長。 目の前のヒットを「運」で終わらせてはいけません。 それは、あなたの会社が次のステージへ行くための「種」です。

今日、社員の皆さんにこう問いかけてみてください。 「うちの商品が、もし全く別の業界(例えばアニメやスポーツ)と組むとしたら、どこに『余白』があるかな?」

答えは、現場の泥臭い試行錯誤の中にしかありません。 さあ、コーヒーを飲み干したら、現場へ行きましょう。

共に汗をかきましょう。

小島章裕

元・苦情係の社長参謀、企画力が強み。創業2001年、事業開発で企業を強くする会社を経営。毎日200件のクレーム対応で培った顧客目線を武器に、経営者の右腕、現場の伴走者として事業開発と組織変革を支援。お客様の痛みを知るからこそ、血の通った戦略で貴社の挑戦を支援します。趣味はウルトラマラソン&トレイルラン。

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