中小企業の経営者が口では「うちの社員はアイデアを提案してこない」と嘆きながら、本音では社内に専門の企画マンを置くことや、活発な提案を必ずしも望んでいない、という矛盾した心理。その背景には、中小企業特有の構造的・心理的な事情が複雑に絡み合っています。その主な理由として3つ考えられます。
ウィッテムの企画参謀の小島です。
今回は、最後の【第3話】をご紹介します。
<経営者の心理>
社員の提案を「育てて事業化する」仕組みと覚悟の欠如
たとえ社員から良いアイデアの「種」が提案されたとしても、それを事業として成立させるには、多くのハードルがあります。
(1)評価の壁
そのアイデアに本当に市場性があるのか、自社の技術で実現可能なのかを正しく評価する目や仕組みがない。
(2)育成の壁
荒削りなアイデアを、議論を重ね、調査を行い、事業計画にまで昇華させる時間的・精神的な余裕が経営者にも現場にもない。
(3)失敗許容の壁
挑戦には失敗がつきものですが、その失敗を許容し、次の糧にするという企業文化が醸成されていない。
結果として、経営者は「社員から出てくるアイデアはどうせ現場目線の小さな改善か、現実離れした夢物語ばかりだ」と決めつけてしまいがちです。提案を吟味し、育てる手間とコストをかけるくらいなら、最初から期待しない方が楽、という諦めに近い心境に至っているのです。
<課題>
社員の提案を事業化まで育てるプロセスや、失敗を許容する文化がない。
<解決策>
アイデアの「種」を育てる具体的な「仕組み」と「文化」を創る
良いアイデアも、それを育てる環境がなければ枯れてしまいます。「提案しろ」と言うだけでなく、提案が正しく評価され、育っていくための具体的な仕組みと、挑戦を称賛する文化の両輪が必要です。
(1) アイデア提案制度をゲーム化・イベント化する
形骸化した提案箱は廃止し、もっとワクワクする仕組みを導入します。
社内ビジネスコンテスト: 半年に一度など、テーマを決めて社内からビジネスアイデアを募集し、優れた提案には報奨金や事業化の権利を与える。
評価プロセスの透明化: 「誰が」「どんな基準で」「いつまでに」評価するのかを明確にし、不採用の場合でも必ず建設的なフィードバックを返すことをルール化します。これにより、提案者は納得感を得られ、次の挑戦へのモチベーションにつながります。
(2)「失敗」を称賛する文化を意図的に作る
経営者自らが、過去の失敗談をオープンに語り、「挑戦した結果の失敗は、何もしないことより価値がある」というメッセージを繰り返し発信することが重要です。成功事例だけでなく、「この挑戦はうまくいかなかったが、ここからこんな学びがあった」という「失敗からの学び」を共有する場(例:月一の共有会など)を設けることも有効です。
(3)経営者が「最初の顧客」になる
社員から出てきたアイデアに対して、経営者が「最初の顧客」になってあげましょう。「面白い!もしそれが実現したら、私(わが社)は買うよ。そのためには、どんな機能が必要?」と問いかけることで、社員は顧客視点でアイデアを具体化する訓練ができます。これは、アイデアを育てる上で極めて実践的なサポートとなります。
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