休日の土鍋ご飯と、ある「体験」の話
こんにちは。ウィッテムの小島です。
突然ですが、皆さんは週末の食事、どうされていますか? 我が家は、もっぱら「自宅派」です。名古屋の街中で外食するのも嫌いではないですが、実際に行くのは子どもの誕生日や結婚記念日などの「晴れの日」くらい。
節約のため、というわけではありません。自宅のほうが周りを気にせず、ゆっくり食べて飲めるからです。もちろん、準備や片付けの手間はかかります。でも、少し良い食材を買ってきて丁寧に調理すると、店舗には敵わないまでも「そこそこ美味い」ものができあがるんですよね。
ちなみに最近のマイブームは、「土鍋で炊き込みご飯」を作ることです。 フタを開けた瞬間に立ち上る湯気と、おこげの香ばしい匂い。これだけで、いつもの食卓がちょっとした「イベント」に変わります。
なぜ、わざわざ手間をかけて土鍋で炊くのか? それは、単に「腹を満たす」ためではなく、「美味しいご飯を待つワクワク感」という体験を味わいたいからです。
実は今日、この記事でお伝えしたいのはこの「体験」についてです。 「新規事業を立ち上げたいが、何から手をつけていいか分からない」と悩む経営者の方へ。今日は、ある大手メーカーのニュースを題材に、皆さんの会社に眠る「新しい収益の柱」の見つけ方をお話しします。
この記事を読み終える頃には、「なるほど、ウチのあの業務もお金になるかもしれない!」と、明日現場に走って行きたくなるはずです。
なぜ象印は「食堂」で大行列を作れたのか?
先日、日経MJでこんな記事がありました。 象印マホービンが、自社の最高級炊飯器「炎舞炊き」で炊いたご飯を提供する直営の「象印食堂」を、2028年度までに10店舗に拡大するというニュースです。

すでに大阪や東京の店舗では行列ができ、1台10万円を超える炊飯器の売上も絶好調。外食事業単体でも、25年11月期には約6億4000万円という大きな売上を作っています。
単なるニュース解説なら「メーカーの飲食業参入が成功したね」で終わります。しかし、事業開発の現場を這いずり回ってきた私の視点は違います。 これは「お客様の『痛み』を、見事なまでに利益に変えた戦略」なのです。
私はかつて、通販事業の苦情対応部署にいました。毎日毎日、お客様の怒りや不安の声を最前線で浴び続ける中で、確信したことがあります。 それは、「お客様の声(特に痛みや不安)にこそ、最大の経営資源が眠っている」ということです。
お客様が10万円の炊飯器を買う時、心の中にはどんな「痛み(ハードル)」があるでしょうか? 「本当に10万円の価値があるの?」「自分の家のお米でも美味しく炊けるの?」「買って失敗したらどうしよう」……。これらすべてが「痛み」です。
象印は、この痛みを消すために「まずは食べてもらう」という方法をとりました。ショールームで機械を眺めさせるのではなく、美味しいおかずと一緒に「体験」として提供したのです。
結果として、「販促活動(コスト)」だった試食が、「外食事業(プロフィット)」という立派な新規事業に化けました。お客様は喜んでお金を払いながら、炊飯器の性能に感動し、商品を買っていく。これこそが、中小企業が目指すべき新規事業の理想形です。
4. 実践:明日からできる「泥臭い」第一歩
「象印は大手だからできるんだよ。ウチには食堂を出す予算なんてない」 そんな声が聞こえてきそうですね。でも、安心してください。本質はそこではありません。
予算をかけずに、明日からできることがあります。 それは、「自社の販売プロセスの手前にある『体験』を切り売りできないか?」を考えることです。
【小島流】「体験の切り売り」フレームワーク
❶痛みの特定: 自社の主力商品・サービスを買う前に、お客様が一番不安に思っている「痛み(ハードル)」は何か?
❷プロセスの切り出し: その痛みを解消するために、普段皆さんが「タダで」やっている説明やデモ、お試し作業はないか?
❸価値の転換: そのお試し作業を、あえて「有料のイベント」や「少額のサービス」として商品化できないか?
例えば、あなたが工務店の社長なら。 家を建てる前の「木材選び」を、親子で参加できる「マイ箸作りワークショップ」として500円で提供してみる。木の香りと温もりを「体験」したお客様は、あなたの会社で家を建てたくなるはずです。
明日、現場の社員にこう聞いてみてください。 「お客様がうちと契約する直前に、いつもポロッとこぼす不安って何?」 その答えに、新規事業の種が必ず隠れています。
おまけ:小島流「味変アイデア」
ここで少し、実践家としてのスパイスを。 もし私が象印の社長参謀だったら、食堂の拡大に加えてこんな一手を提案します。
ちなみに…「炎舞炊き・ホームパーティー・レンタルキット」はどうでしょうか?
私のように「週末は自宅派」という人間にとって、店舗に並ぶのは少しハードルが高い。ならば、最高級炊飯器「炎舞炊き」本体と、マイスター厳選のお米、そして美味しい炊き込みご飯のレシピをセットにして、週末限定で1万円でレンタルするのです。 自宅のパーティーで最高のご飯が炊けたら、その感動は参加した友人家族にも伝播します。「あるもの(既存の炊飯器)」を活かして、「ないもの(自宅での最高の体験)」を創る。これがウィッテム流の事業開発です。
参謀からのエール
いかがでしたでしょうか。
- 痛みの解消は最強のビジネスになる。
- 販促(コスト)を事業(プロフィット)に転換する視点を持つ。
- 自社の当たり前の中に、売れる「体験」は必ず眠っている。
新規事業は、決して雲の上にある高尚なアイデアから生まれるのではありません。現場の泥臭いお客様の声から生まれるのです。
机上の空論は終わりにしましょう。 あなたの会社の「痛み」は何ですか? ぜひ、私に教えてください。一緒に現場に入り込み、汗をかいて、新しい収益の柱を創り上げましょう!
【付録】経営者が朝礼で社員に語る「30秒メッセージ」
(※明日の朝礼で、ぜひ社長ご自身の言葉として熱く語りかけてみてください)
「みんな、おはよう。 昨晩、面白い記事を読んだんだ。象印が、10万円の炊飯器を売るために『食堂』を出して、それが大行列を作っているという話だ。 彼らは『機械』を売る前に、お客様の『買って失敗したくない』という不安に寄り添い、最高のご飯を食べる『体験』を売ったんだ。 ひるがえって、ウチはどうだろうか? お客様がウチと契約する前に、密かに抱えている『不安や痛み』は何だろう? 私たちが普段当たり前にやっている業務の中に、お客様を感動させる『体験』が眠っていないだろうか。 今日はぜひ、お客様の『ちょっとした不安の声』に耳を澄ませてみてほしい。そこに、私たちの新しい会社の未来があるはずだ。今日も一日よろしく!」
























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