
新規事業開発プログラムでイノベーションがなかなか起こらないのは、研修という「非日常のイベント」と、実際の事業を動かす「日常の企業活動」との間に、深刻な断絶があるためです。
多くのプログラムは良く設計されていますが、研修で生まれた「革新的なアイデアの芽」が、組織の固い土壌に阻まれて育たないケースがほとんどです。主な原因は以下の通りです。
1. 既存事業の論理が強すぎる(組織の免疫反応)
これが最大の理由です。企業は既存事業を効率的に運営するために最適化されています。そこに、不確実で小規模な新規事業のアイデアが入ってくると、組織の「免疫システム」が作動し、異物として排除しようとします。
- 評価基準のミスマッチ: 既存事業の評価指標(ROI、短期的な売上・利益)で、生まれたての新規事業を評価してしまいます。革新的なアイデアほど、最初は売上が立たず、赤字になるため、「儲からない事業」としてすぐに却下されます。
- 失敗への不寛容: 減点主義の人事評価が根付いている企業では、失敗はキャリアの傷になります。「挑戦して失敗する」よりも「何もしない」方が安全だと考える社員が多く、リスクを取ることを本能的に避けます。
- リソースの壁: 研修が終わると、参加者は通常業務に戻ります。新規事業を推進するための専任のチーム、予算、時間が与えられず、アイデアは「研修の成果物」として棚卸しされるだけで、実行に移されません。
2. プログラム自体が「お祭り」で終わってしまう
研修の設計自体に問題がある場合もあります。
- 「研修ごっこ」になっている: ビジネスモデルキャンバスを埋めたり、プレゼンをしたりすることが目的化してしまい、顧客の課題を本当に解決するという本質的な視点が欠けてしまうことがあります。参加者も「研修だから」と割り切り、本気で事業を立ち上げる当事者意識が欠如しがちです。
- リアリティの欠如: 研修という「守られた環境」では、実際の事業開発で直面する泥臭い交渉、社内政治、予期せぬトラブルといったリアルな障壁を経験できません。そのため、計画が絵に描いた餅で終わってしまいます。
- 最終目的が「発表会」: 経営陣に向けたプレゼンテーションがゴールになっており、そこで高評価を得ることが目的化しています。事業化の判断やその後の支援体制が不明確なまま、「良い発表だった」で終わってしまいます。
3. 経営層のコミットメント不足
口では「イノベーションが重要だ」と言っていても、本気で支援する覚悟がなければ何も始まりません。
- 長期的な視点の欠如: 経営層が短期的な成果を求めすぎると、長期的な投資が必要な革新的な事業は育ちません。
- 権限移譲の不足: 担当者に十分な裁量権や予算を与えず、意思決定のたびに上層部のお伺いを立てる必要がある状態では、スピード感が命の新規事業は進みません。
- 「誰がリスクを取るのか」が不明確: 最終的に事業の失敗の責任を誰が取るのかが曖昧なため、誰も本気でアクセルを踏めません。
結論
新規事業開発プログラムからイノベーションが生まれないのは、アイデアの質や参加者の能力が低いからではなく、多くの場合、企業全体の文化、制度、評価軸がイノベーションを許容するように設計されていないためです。
この問題を解決するには、研修プログラムの改善だけでなく、失敗を許容し、挑戦を奨励する文化の醸成、新規事業に適した評価制度の導入、そして経営層が本気でリスクを取って支援するという強いコミットメントが不可欠です。
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