
「うちは業界自体が縮小しているから、打ち手がない」 「商品はコモディティ化していて、価格競争しかできない」
もしあなたが今、自社の主力事業に対してそんな閉塞感を感じているなら、今日の話は間違いなくあなたのためのものです。
10年で市場規模が17%も縮小している典型的な成熟産業で、「40万円以上する商品」が値段も見ずに即決されている事例をご存じでしょうか?

主役は、物置大手の「ヨドコウ」です。
彼らは今、単なる「収納用品」を売るのをやめ、「大人の秘密基地」を売ることで、縮小市場における勝ち筋を見つけ出しています。
今回は、最新の日経MJの記事をベースに、「機能」を「憧れ」に変えるビジネスモデルの転換術を深掘りします。
1. 撤退戦の市場で、あえて「高単価」を狙う
まず、前提となる厳しい現実を共有します。 物置ビジネスの土台となる「戸建て住宅」の着工件数は、この10年で約17%減少しています。特に都市部では「ペンシル住宅」が増え、庭に物置を置くスペースなど皆無に等しい状況です。
普通に考えれば「撤退」か、生き残りをかけた「安売り競争」しか道はないように見えます。
しかし、ヨドコウはこの逆を行きました。
- BEAMS DESIGN監修のミリタリー風物置(40万円〜)
- Colemanコラボの赤と緑の物置(2000棟即完売)
- そして今回発表された、ムラサキスポーツコラボの「サーファー/スノーボーダー専用」物置
これらは、ホームセンターのチラシに載っている「9,800円」の物置とは全く別の商品です。
特にBEAMSモデルに関しては、担当者が「値段を見ずに購入を即決するお客さんもいた」と語るほど。 なぜ、斜陽市場でこんな現象が起きるのでしょうか?
2. 「What」ではなく「Meaning」を変えた

ヨドコウがやったことは、商品の機能を劇的に変えたわけではありません。鉄板の加工技術はそのままです。 彼らが変えたのは、「その商品が顧客にとってどういう意味を持つか(Meaning)」という定義です。
- これまでの定義(Before):
- 不用品や隠したいものを詰め込む「バックヤード」
- 家の裏側にひっそりと置くもの
- 色は目立たない白か黒
- 価値基準=「安さ」「容量」
- 新しい定義(After):
- 愛する趣味のギア(道具)を飾る「ステージ」
- 仲間や自分自身に見せるためのもの
- 色はブランドの世界観を表すデザイン
- 価値基準=「好き」「世界観」
コロナ禍を経て、人々の「趣味への投資」は加速しました。 ヨドコウは、「収納産業」から「ライフスタイル産業」へとピボット(方向転換)したのです。
市場全体(マクロ)が縮んでいても、熱量が高い特定のニッチ市場(ミクロ)に深く刺されば、価格競争は無効化されます。
3. 自社にどう応用するか?「借りてくる」戦略



「それはヨドコウだからできたんでしょ?」と思われるかもしれません。 しかし、ここには中小企業こそ真似すべき「弱者の戦略」が隠されています。
ヨドコウの勝因は、自社だけでブランドを作ろうとしなかったことです。
- おしゃれな層を取り込みたい → BEAMSの力を借りる
- アウトドア層を取り込みたい → Colemanの力を借りる
- 横ノリ系(サーフ・スノボ)を取り込みたい → ムラサキスポーツの力を借りる
自社にあるのは「確かな製造技術(機能)」だけ。そこに、他社が持つ「熱狂的なファン(文脈)」を掛け合わせる。 これを「コンテキスト(文脈)の借用」と呼びます。
あなたの会社で考えるための「問い」
ぜひ、次の経営会議でこの問いを投げかけてみてください。
「我が社の地味な定番商品は、誰の『どんな情熱』を支えられるか?」
- もしあなたが「金網」を作っているなら、それはフェンスではなく、植物愛好家のための「ボタニカル・ハンギング・ウォール」になれないか?
- もしあなたが「業務用冷蔵庫」を作っているなら、それは厨房機器ではなく、日本酒マニアのための「熟成セラー」になれないか?
その道のプロや、トップブランドと組むことで、「機能」は一瞬で「ブランド」に変わります。
4. まとめ:不用品を隠すな、宝物を飾れ

市場環境を嘆いても、数字は改善しません。 しかし、視点を変えれば、縮小市場の中にも「熱狂」は埋まっています。
ヨドコウの事例は、「不用品を隠す箱を売るな。宝物を飾るステージを売れ」ということを教えてくれました。
あなたの会社の商品も、見せ方を変えれば、誰かにとっての「宝箱」になる可能性を秘めています。 ぜひ、異業種とのコラボレーションという切り口で、既存事業の棚卸しをしてみてください。

























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