▼深夜の創造しい会
北向きの書斎と、魔法瓶の温もり
名古屋の自宅にて。 私の書斎は北側にあり、この時期の室温は10度台。キーボードを叩く指先がかじかむほどの寒さです。
あまりに寒いので、私は下半身を寝袋に突っ込み、上着には厚手の「はんてん」を羽織るという、およそ社長参謀とは思えない格好で仕事をしています。でも、不思議とこの少し過酷な環境が、アイデアの発想には丁度いい。(個人的な感想ですが)
ただ、一つだけ問題があります。淹れたての熱いコーヒーが、すぐに冷めてしまうこと。 そこで私が4年前から愛用しているのが、あるメーカーの小型マグボトルです。「持ち歩けるタンブラー」というコピーに惹かれて買ったのですが、これが本当に優秀で、数時間経っても温かいまま。
このボトルを作っているのが、今回ご紹介する「ピーコック魔法瓶工業」です。
私がこのボトルを握りしめながら感じたのは、単なる「保温性」への感謝だけではありません。 「ああ、これは私たち中小企業が目指すべき『戦い方』そのものだ」 という、熱い気づきでした。
なぜ、業界トップではない彼らが、これほど愛される商品を作れるのか。 今日は、冷めないコーヒーを片手に、「4番手だからこそできる、逆転のビジネス論」についてお話しします。

なぜ「4番手」がトレンドを作れるのか?
「象」と「虎」の足元にある、黄金の隙間
魔法瓶業界といえば、「象印」や「タイガー」といった動物の名前を冠した巨人が君臨しています。ピーコック(孔雀)は、業界4番手。広報の方自身が「流通に並べてもらうだけでは、もう選ばれない」と語るほど、厳しい立ち位置にありました。
しかし、ここ数年のピーコックは面白い。 特に2025年に80万本を売った「アイスパック(携帯氷のう)」の事例は、私たち中小企業にとって「希望の塊」のような話です。
「顧客の痛み」は移動する
この商品、もともとは社長ご自身の「ゴルフのラウンド中に氷のうの氷がすぐ溶ける」という個人的な痛みから生まれました。 しかし、発売当初は鳴かず飛ばず。売り場さえ見つからなかった。
風向きが変わったのは、ある北海道の主婦のSNS投稿でした。 「子供のネックリング(首元用冷却材)を復活させるために使える」
この瞬間、商品の価値が「ゴルファーの贅沢品」から「猛暑から子供を守る必需品」へと激変したのです。
私が苦情対応の現場にいた頃、徹底的に叩き込まれたことがあります。 それは、「商品は作り手が定義するものではない。使い手が定義するものだ」ということ。
大手が王道(最大公約数のニーズ)を行くなら、私たちは「誰かの切実な痛み」というニッチな隙間を狙えばいい。 ピーコックは、自分たちが「4番手」であることを認め、プライドを捨てて「市場の声(マーケットイン)」に耳を傾けた。だからこそ、「ゲーミングボトル」や「おうち居酒屋用酒器」といった、大手なら企画会議で落とされそうな「とがった商品」を次々と世に出せるのです。
「ニッチ」とは、市場が小さいことではありません。「大手が入り込めないほど、顧客の痛みが深い場所」のことです。
明日からできる「泥臭い」第一歩
「うちはメーカーじゃないから」「開発予算なんてないよ」 そう思われた経営者の方へ。お金をかけずに明日からできる、小島流「隙間発見」アクションを提案します。
自社の強みと、意外なニーズを掛け合わせる思考実験です。
【参謀の思考フレームワーク:用途の誤読を探せ】
Step 1: 現場へのヒアリング 営業やカスタマーサポートの社員に、以下の質問を投げかけてください。
・「お客様が、本来の使い方とは『違う使い方』をしている事例はないか?」
・「お客様から『こんなことに使えないか?』と無理難題を言われたことはないか?」
Step 2: 「痛み」の翻訳 その「変な使い方」や「無理難題」の裏には、既存の商品では解決できない「未解決の痛み」が隠れています。
(例)配送業のトラックを「休憩所」として使っているドライバーがいる → 「動く個室」としてのニーズがあるのでは?
Step 3: 自社リソースの転用 新しい設備投資をする前に、「今ある商品・サービスの『見せ方』を変えるだけ」で、その痛みに応えられないか考えます。
(例)ゴルフ用の氷のうホルダー → 「ネックリング復活ケース」として名前を変えて提案する
ピーコックの成功は、新しい技術を発明したからではありません。 「既存の技術(魔法瓶)」を「新しい痛み(ネックリングの保冷)」にぶつけたことが勝因です。
あなたの会社にも、まだ名前がついていないだけで、誰かを救える「資産」が必ず眠っています。 それを掘り起こすのが、私たち経営陣の仕事です。
参謀からのエール
業界トップでなくても、資金力がなくても、戦う方法はあります。 むしろ、身軽な私たちだからこそ、お客様の細かな「痛み」に寄り添い、即座に動くことができる。
「4番手だからこそ、恐れずに飛べる」
ピーコックのこの気概を、ぜひ自社のスローガンに重ねてみてください。 寒空の下でも、情熱があればコーヒーは冷めません。 一緒に、泥臭く汗をかきましょう。
「うちの会社なら、こんな『隙間』があるかも?」と思いついた方は、ぜひコメントで教えてください。壁打ち相手になりますよ。
【付録】経営者が朝礼で社員に語る「30秒メッセージ」
(※明日の朝礼で、そのまま読み上げてください)
「おはようございます。 今日は皆さんに、ある魔法瓶メーカーの話をしたいと思います。 業界4位の『ピーコック』という会社です。昨年の夏、「持ち運べる氷のう」が大ヒットしました。彼らは、大手と同じ土俵で戦うのをやめました。その代わり、お客様の『もっとこうだったらいいのに』という小さな声に徹底的に耳を傾け、大ヒット商品を連発しています。
我々も同じです。規模で勝つ必要はない。でも、お客様への『寄り添い方』では一番になろう。 現場で、お客様がポロッと漏らした『困りごと』や、意外な『使い方』があったら、どんな些細なことでも私に教えてほしい。 そこに、次の私たちのビジネスの種が埋まっています。 我々は「くじゃく」のように、独自の色で鮮やかに戦っていきましょう。 今日も一日、よろしくお願いします!」

























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