▼音声で聴く
AIには描けない「汗と泥」のプロセス
こんにちは、小島です。名古屋のオフィスで、少し濃いめのコーヒーを飲みながらこれを書いています。
最近、起業や新規事業の相談を受けていて、気になることがあります。 「小島さん、いいアイデアができました!」と、見栄えの良い企画書を持ってきてくださるのですが、私が「なるほど、で、なぜこの企画に至ったのですか?」と聞くと、急に言葉に詰まってしまう方が増えたのです。
よくよく聞くと、「AIに壁打ちしてもらって出しました」と言う。 もちろん、AIは便利です。私も使います。しかし、「無数の選択肢から、なぜあえてその茨の道を選んだのか」というプロセスが欠落している企画は、脆い。
断言します。事業は、遅かれ早かれ必ず壁にぶつかります。 その時、「AIがこう言ったから」で始めた事業は、迂回ルートが見つけられずに座礁します。一方で、泥臭く悩み、自分の頭で汗をかいて「これしかない」と選んだ道なら、壁にぶつかっても「じゃあ、こう穴を掘ろう」と知恵が出る。生き抜く力は、企画書そのものではなく、企画に至るまでの「思考のプロセス」に宿るのです。
今日ご紹介するニュースは、まさにその「思考のプロセス」と「覚悟」が、これまでの常識を覆した事例です。 たかがハンバーガー、されどハンバーガー。 1個2,000円以上するバーガーが、なぜ今、飛ぶように売れ、全国へ広がろうとしているのか。そこには、私たち中小企業が「安売り競争」から抜け出すためのヒントが詰まっています。

「2,000円バーガー」に見る、ブルーオーシャンの正体
「高いから売れない」は経営者の思い込み
日経MJの記事によると、今、「2,000円超えの高級グルメバーガー」が勢力を拡大しています。 これまでは「個人店がひっそりとやるもの」でしたが、今は違います。「BRISK STAND」や「SHOGUN BURGER」といった新興チェーンが、50店舗規模を目指して拡大フェーズに入っているのです。
ここで注目すべきは、彼らが「ファストフードの高級版」を作ったのではないということです。
記事の中で、BRISKの社長はこう言っています。
「バーガーをファストフードではなく、国産素材と日本発の製法による『日本料理』として広めたい」
ここです。ここに勝機があります。 彼らはハンバーガーという「定義」を変えました。
- Before: 安い、早い、ジャンクフード(マクドナルド等の領域)
- After: 職人が焼く、肉汁を味わう、日本料理(寿司や天ぷらに並ぶ領域)
顧客のインサイト(本音)を読み解くと、こうなります。 「ちゃんとした美味しい肉が食べたい。でも、焼肉やステーキハウスは重いし時間がかかる。かといってファストフードでは心が満たされない…」 この「高品質な肉を手軽に、でも贅沢に食べたい」という満たされていない痛み(空白市場)に、2,000円という価格設定がバチッとはまったのです。
「高価格×多店舗」という未踏の地
記事では、バーガー業界を4つのゾーンに分けた時、「高価格で多店舗」の領域がブルーオーシャンだと指摘されています。
これ、私たち中小企業経営者にとって、非常に勇気の出る話だと思いませんか? 多くの企業は、以下のどちらかで苦しんでいます。
- 低価格×多店舗: 大手資本との消耗戦(レッドオーシャン)
- 高価格×単店舗: 職人のこだわりで終わる(スケールしない)
この「SHOGUN」や「BRISK」は、職人技(パティの焼き方など)を徹底的に分解し、ランク制度や研修で標準化することで、「職人の味」を「チェーン店」で提供するという離れ業をやってのけました。
私はかつて、通販の苦情対応係として、毎日お客様の「怒り」と向き合ってきました。そこから学んだのは、お客様はお金を払いたくないのではない。「納得できる価値」がないことに怒っているのだということです。
2,000円でも「安い」「母国より値頃」と言わせる価値。 それはAIがはじき出した答えではなく、現場でお客様の反応を見ながら、「これなら感動してもらえる」と信じ抜いた経営者の泥臭い試行錯誤(プロセス)からしか生まれません。
明日からできる「自社の再定義」
では、明日から私たちはどう動くべきか。 いきなり「2,000円の商品を作れ」とは言いません。まずは、自社の商品・サービスの「定義」を疑うことから始めてみてください。
予算をかけずにできる、小島流のアプローチを提案します。
アクションプラン:自社の「バーガー」を「日本料理」に変える
明日、現場の社員さん、あるいは古くからのお客様にこう問いかけてみてください。
「うちの商品は、業界の『マクドナルド(安価な定番)』だと思われていないか? これを『高級料亭』の文脈で語るとしたら、何が足りない?」
そして、以下のフレームワークで思考を整理してみてください。
【小島流:価値転換の3ステップ】
(1)脱・カテゴリー: あなたの会社の商品を、今の業界カテゴリーから外してください。
(例)ただの「ハンバーガー」ではない → 「手軽に食べられる和牛ステーキ料理」
(例)ただの「町工場」ではない → 「開発者のための試作実験室」
(2)痛みの発見: その新しい定義に対して、お客様が感じている「不満(痛み)」は何か?
(例)ステーキは食べるのに時間がかかる、服が臭くなる。
(例)試作を頼むと、図面通りにしか作ってくれず、アドバイスがない。
(3)プロセスの価値化: その痛みを解決するために、自社のどの「泥臭いこだわり」が使えるか?
(例)鉄板でのスマッシュ製法(技術)× 短時間提供(仕組み)
(例)熟練工の「あうんの呼吸」による設計変更提案
AIに「儲かる事業」を聞く前に、自社の「こだわり」を深く掘る。 それが、高価格でも選ばれ続けるブランドを作る第一歩です。
参謀からのエール
企画書の見栄えなんて、どうでもいいんです。 大事なのは、「なぜ、これをやるのか」というプロセスへの確信です。 2,000円のバーガーが売れる時代です。あなたの会社の技術やサービスが、適正な高値で売れないはずがありません。
「安売り」という思考停止から抜け出し、一緒に「価値」で勝負する世界へ踏み出しましょう。
あなたの会社に眠る「高くても欲しい」と言わせる原石、私と一緒に磨いてみませんか? いつでも「参謀」として、あなたの隣で汗をかく準備はできています。
【付録】経営者が朝礼で社員に語る「30秒メッセージ」
(翌朝、社員の皆さんの前で、自身の言葉として語ってください)
「おはようございます。 今日は皆に、あるハンバーガー屋の話をしたいと思う。 今、1個2,000円以上するハンバーガーが、飛ぶように売れているそうだ。 彼らはそれを『ファストフード』ではなく『日本料理』だと定義して、本気で味を追求しているからだ。
ひるがえって、うちはどうだろう? 自分たちの仕事を『安さが取り柄』だと、勝手に低く見積もっていないだろうか。 私は、うちの技術(サービス)には、もっと高い価値があるとおもっている。 だからこれからは、『どうすれば安くできるか』ではなく、『どうすればお客様が感動して、今の倍の値段でも買いたくなるか』を一緒に考えてほしい。 私たちは、自分たちの業界の『2,000円バーガー』を目指そう。以上!」

























コメント