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「会社を大きくしたい」と願う社長が陥る罠。大阪のパン屋に学ぶ起死回生の裏側

こんにちは。事業開発の実践家、ウィッテムの小島です。

少し前の話になりますが、我が家でちょっとした「事件」がありました。 私の妻はあまり物欲がなく、パンを食べる時もずっと電子レンジで温めて済ませていました。ある日、私の家電量販店のポイントが貯まったので「何か欲しいものある?」と聞いたところ、「特にない」というつれない返事。

せっかくなのでポイント内で買えるトースターを勝手に購入したんです。 案の定、最初は「キッチンで場所をとるんだけど…」と不満げな妻。ところが数日経つと、ちょっとした変化が起きました。我が家のパンの消費量が、劇的に増えたのです。

キッチンで常にトースターが目に入るようになったことで、妻の「パン欲」が刺激されたのでしょう。妻だけでなく、子どもたちも、そして私も、自分でパンを焼いて食べるようになりました。

この時、私は気づきました。「いつも眼にする(可視化される)」って、人の行動を変えるほどの威力があるんだなと。 もし、冷蔵庫の奥で眠っている瓶詰めの佃煮も、常温保存可能にして常に食卓テーブルの上に置いておけたら、きっと消費量は跳ね上がるはずです。

さて、なぜ私がこんな話をしたのか。 それは、多くの中小企業が「自社の良さ」を冷蔵庫の奥にしまい込み、顧客の眼に触れない状態にしてしまっているからです。

「新規事業をやらなきゃいけない。でも何から手をつければ…」とお悩みの経営者の方。安心してください。ゼロからとんでもない発明をする必要はありません。この記事を読めば、「今あるもの」の見せ方を変え、明日から実践できる新規事業の第一歩が明確になります。


ニュースの深読みと「問い」

「背伸び」をやめ、足元の「本音」に耳を傾ける

今回取り上げるのは、大阪のベーカリー「クックハウス」が販売し、1年で1億円超えを売り上げたという「おかんパン」の事例です。

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このヒットの裏側には、社長の勇気ある決断がありました。それは「全国展開して会社を大きくする」という目標を捨て、「地元・大阪に根差す」へと戦略を大転換したことです。

私は長年、通販事業の苦情対応部署でお客様の「切実な声」に向き合ってきました。そこから得た教訓は、「人の本音(痛み)にこそ、最大の経営資源がある」ということです。

多田社長は、社員満足度調査を通じて「地域に根差した企業としての自負」という現場のリアルな声(本音)を拾い上げました。社長が描く「全国展開」という綺麗事ではなく、社員の泥臭い誇りにフォーカスしたのです。トップの机上の空論よりも、現場の手触り感を信じた。 これが勝因の第一歩です。

既存の「ミルクパン」が1億円に化けた理由

そして私が最も注目したいのは、彼らが「まったく新しいパンをゼロから開発したわけではない」という点です。

使われたのは、各店舗で地味に売れていた既存の「ミルクパン」。そこに、社員が持ち寄った「気いつけて帰りや」といった「おかん語録」と焼き印を組み合わせただけです。

あるものを活かして、ないものを創る。 まさに私が日頃お伝えしていることです。多田社長は、ミルクパンという「素材」に、大阪のユーモアという「感情(コミュニケーション)」を乗せました。その結果、ただのパンが「わざわざ店舗へ買いに行きたくなるお土産」へと見事に生まれ変わったのです。

これは、社会構造の変化にも見事に適応しています。モノが溢れる時代、人は「ただ美味しいパン」ではなく、「SNSでシェアしたくなる体験」や「誰かとの会話のきっかけ」にお金を払います。彼らはパンを売ったのではなく、おかんとの温かいやり取り(コミュニケーションのフック)を売ったのです。


実践:明日からできる「泥臭い」第一歩

現場に眠る「当たり前」を掘り起こせ

「うちにはおかんパンのような面白い素材なんてないよ」 そう思われるかもしれません。断言します。それは見えていないだけです。 トースターと同じで、目に見えるところに置いていないからです。

明日、会社に行ったら、予算ゼロでできる泥臭い行動を一つ起こしてください。それは**「現場の社員に問いかけること」**です。

具体的には、以下の「小島流フレームワーク」を使って、既存の商品やサービスを再定義してみてください。

【小島流:自社の「宝」発掘フレームワーク】

  1. 自社の「地味だけど、なぜか一定のファンがいる商品(サービス)」はどれか?
    (※売上トップのエースではなく、いぶし銀の存在を探す)
  2. その商品は、顧客のどんな「日常のちょっとした不満・面倒くささ・痛み」を和らげているか?
    (※「美味しい」「便利」といった表面的な理由ではなく、顧客の生活背景を想像する)
  3. もしその商品に「人格(キャラクター)」を持たせるとしたら、どんな言葉をしゃべるか?
    (※機能ではなく、感情で語らせる)

新規事業は、遠くの青い鳥を探すことではありません。足元の泥の中に埋まっている、今まで気づかなかった石ころを磨く作業なのです。


おまけ:小島流「味変アイデア」

ちなみに…私なら「おかんパン」をこう展開する

既存のものを活かして大ヒットさせた「おかんパン」ですが、私ならここに一つスパイスを加えます。

この商品は「店舗に足を運んでもらう」ことに成功しました。次は、この「おかんの温もり」をさらに拡張させます。例えば、「おかんからの仕送り便」としてのサブスクリプション(定期便)化です。

大阪を離れて東京で働く若者に向けて、実家の親(あるいは地元企業であるクックハウス)から月に一度、おかんパンと手書き風のメッセージ(時にはおせっかいな小言)が届く。パンという「モノ」の消費だけでなく、「離れた家族や地元とのつながり」という「コト」の消費を深掘りする展開です。あるものを活かして、より深い感情的価値を創り出せるはずです。


参謀からのエール

  • トップの「背伸び」より、現場の「本音」にビジネスの種がある。
  • ゼロから創るな。「今あるもの」の掛け合わせと見せ方を変えろ。
  • 商品は機能ではなく、「誰との、どんなコミュニケーションを生むか」で再定義せよ。

新規事業は、一部の天才だけの特権ではありません。泥臭く現場に入り込み、顧客や社員の小さな声に耳を傾ける「実践家」にのみ、突破口は開かれます。

あなたの会社には、どんな「痛み」や「隠れた宝」がありますか? ぜひ、私に教えてください。一緒に汗をかき、泥にまみれながら、新しい収益の柱を創り上げましょう。


【付録】経営者が朝礼で社員に語る「30秒メッセージ」

「おはようございます。 今日は皆さんに、少し視点を変えてもらうためのお話をします。 大阪のあるパン屋さんで『おかんパン』という商品が大ヒットしました。実はこれ、全く新しいパンを開発したわけではなく、昔からあるミルクパンに『おかんの一言』を添えただけなんです。

私はこれを知ってハッとしました。うちの会社にも、当たり前すぎて私たちが価値に気づいていない『宝物』が必ず眠っているはずです。 それは、皆さんが毎日向き合っているお客様のちょっとした声や、現場での何気ない工夫の中にあります。

『こんなの売れるわけない』『当たり前すぎる』と決めつけず、どんな小さな気づきでも構いません。皆さんの生の声を、私にぶつけてください。今あるものを活かして、新しい価値を創る。今日から、その宝探しを一緒に始めましょう!」

小島章裕

元・苦情係の社長参謀、企画力が強み。創業2001年、事業開発で企業を強くする会社を経営。毎日200件のクレーム対応で培った顧客目線を武器に、経営者の右腕、現場の伴走者として事業開発と組織変革を支援。お客様の痛みを知るからこそ、血の通った戦略で貴社の挑戦を支援します。趣味はウルトラマラソン&トレイルラン。

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